住む人が主役の家造りを
住宅関連の建築雑誌を読んでいると、違和感を覚えることがあります。その原因を考え、わかったのは、「掲載された写真から、住んでいる雰囲気が伝わりづらい」ということでした。
モデルルームとは違い、人が使っている住宅を雑誌などに掲載する場合、さすがにきれいに片付けて撮影することは、自分の家を考えれば容易に想像できます。
しかし、多少の雑然さや家具と建物の統一性のなさも、住む人のこれまでの歴史を物語る一部として、実際の生活を想像できますし、置いている物の大きさからは空間のスケールを把握することができます。それらの要素があるからこそ、家のパワー(息づかい)をリアルに感じることができると思うのです。
わたしは「人が家に住まうことは、どういうことだろう」と考えながら、日々住宅などの設計に携わっています。住宅が完成するまでは、施主とともに生活の夢を思い描き、それを図面にして、施主の了解を得ながら家造りを進めていきます。
しかし、建物が出来上がって家が完成するわけではなく、住み始めてからが、本当の意味で家がや生活づくりがスタートするのではないでしょうか。住む人が主役となり、生き生きと暮らしていける家を造りつづけたいと、日々奮闘しているところです。
また、人が住まうことは、自分たちだけでなく、同時に周りの人たちと共に生きることでもあります。住宅を一軒建てるだけでも、その周りやまち全体にも影響を及ぼします。建てるとき、あらかじめ周りのまち並みにも配慮して設計することで、そのまちも好きになってくるでしょうし、ますます自分の住宅に対しても愛着がわくと思います。まち並みに配慮した住宅を見た住民が例え一人だったとしても、「まちのために自分の家でも何かやろう」と考えて実行していただけるなら、まちはもっとすてきになっていくのではないでしょうか。
建築の設計者として、そんな家づくり・まちづくりを目指していきたいと考えています。